「N線にスペクター事件 ねつ造する理由/ビーバップ!ハイヒール」

  • 2014/07/04(金) 06:54:10

繰り返される、科学者によるねつ造。

その背景は?


エフレイム・ラッカー教授の誤算。マーク・スペクター事件。

ルネ・ブロンロとN線。思い込みと、病的科学。

製薬会社と大学病院の癒着。


トーマス・エジソンと電気椅子。

アイザック・ニュートンと、ロバート・フック。



ABC朝日放送 ビーバップ!ハイヒールより。

2014年7月3日放送、「科学者たちの不都合な真実 ~ 繰り返される捏造事件の舞台裏」


ゲストブレーン:榎木英介さん。(近畿大学 医学部 病理学教室 講師、科学ジャーナリスト)

「実は、生物学や科学の論文の7割が、再現できないと言われています。その再現できないものの中には、ねつ造が多く含まれていると言われています」

「なぜ、科学者たちは、データのねつ造に手を染めてしまうのか。そこには、科学者を追い詰める様々な原因があると言われています」



博士漂流時代  「余った博士」はどうなるか? (DISCOVERサイエンス)






STAP細胞の問題は、現在も継続中。

医学や科学の世界では、ねつ造事件が数多く発覚している。



□ 不正論文


2006年、大阪大学のある教授の論文に、ねつ造が発覚した。しかも、それに携わっていた助手の一人が服毒自殺するという衝撃のニュースまで飛び込んできた。

亡くなった助手は、自分の研究データを教授が勝手に改ざんし投稿したと、主張。論文の取り下げを訴えていたという。


2013年、東京大学で、大規模な論文データねつ造事件が発覚。問題となったのは、生物学研究所の ある教授。在任中に発表した43の論文に不正が見つかり、撤回することが妥当と判断された。

その教授は、「今回、問題となっている不正箇所の多くは、図表をよく見せるためのお化粧と理解しております」と釈明。しかし、後に、画像の複製や反転、差し替えなど、合計210か所にも及ぶ不正が確認されたという。



<どうして、STAP細胞の件は、あんなに騒ぎになったのか?> 榎木さんの見解。


もし本当だったら、生物学の歴史を塗り替えるような、すごい論文。なので、世界がとても期待をした。それが裏切られたので、ここまで大きな騒動になってしまったのではないか。


問題視されているのは、論文のコピペとか、画像の切り貼り。でも、そういうことをやっている人は、けっこういる。

これは、お見合い写真の修正に例えると、分かりやすいかもしれない。シワを1~2本消すとか、その程度なら、やる人はけっこういる。ただ(今回の件は)、見合い写真を他人の顔にすり替えたぐらいの違いがある。


不正か不正でないかの境界は、微妙な部分がある。シワの修正だと、後で本当の写真を出せば、それですむ。しかし、さすがに他人の顔だと、どうしようもない。けれども、整形だとどうだろう? 化粧をしたらどうだろう? こう考えると、許容範囲の境界は、簡単には分からない。



論文の7割が再現実験できないといっても、すべてが ねつ造というわけではない。特許などの利権が絡む場合、再現できないようにしておいて、その間に研究を進めるとか、特許を出してしまうとか、いろんなケースがある。


STAP細胞の件では、徹底的に他の機関が検証実験をしている。でも、こういうことは非常にめずらしい。なぜなら、検証しても、自分の実績にはならないから。貴重な時間を使うのはもったいないので、検証する人はなかなかいない。




□ 世界を欺いた科学者たち


<エフレイム・ラッカーの誤算>

1980年、権威ある「サイエンス」誌に、画期的な論文が掲載された。それは、がん細胞から治療に役立つある酵素を精製したというもの。発表したのは、当時すでに有名な生物学者であった、エフレイム・ラッカー教授。がん細胞の仕組みがより明らかになり、治療が飛躍的に進歩するのではないかと、大いに期待された。

ラッカー教授のもとには、世界中から優秀な研究者が集まっていました。論文発表の1ヵ月前にも、1人の大学院1年生が、研究チームに加わっている。彼の名は、マーク・スペクター。彼は、難しい実験技術を次々と習得。その腕前は神業とも称され、信頼されたという。

ある日、スペクターは、酵素を取り出すことに成功したと、ラッカー教授に報告。さっそくデータをまとめ、論文を発表することとなりました。これが、冒頭につながる。

しかし、同じ研究室の別の学生が追試したのですが、どうやってもあの酵素が作れない。そこで教授はスペクターを呼び出し、もう一度酵素を精製してほしいと依頼。その数日後、スペクターは姿を消してしまいます。実験データは、ねつ造だったのです。

その後、ラッカー教授は仮説を実証するために研究を続けましたが、実証されることがないまま、1991年に他界した。



大学の研究室では、様々な実験が同時進行している。個々の実験を実際に行うのは、ほとんど学生。教授は統括的な立場で、学生の実験データをもとに、論文をまとめるのが慣例となっている。




<N線の発見>

X線により、医療技術は飛躍的に進歩しました。ドイツの物理学者、ヴィルヘルム・レントゲンの功績です。その8年後、フランスの物理学者、ルネ・ブロンロが、新しい光線「N線」を発見したと発表した。

N線は、ある特殊なプリズムを通して確認できる肉眼では見えない光線。X線に次ぐ大発見だと、大いに期待されました。やがて、フランスを中心に、N線を観測したと名乗り出る科学者が続出。発見から数年で、100人以上の科学者が約300本の論文を発表した。

フランスの科学アカデミーは、第1発見者であるブロンロに、「ルコント賞」を授与。しかし、その頃、アメリカの物理学者 ロバート・ウッドは、悩んでいました。論文を元に何度実験しても、N線を確認することができないのです。

1904年の夏、ウッドはブロンロの実験室を訪ね、N線実験の見学を希望しました。ブロンロは快くそれに応じ、実験が始まります。薄暗い実験室で、N線の測定値を読み上げる、ブロンロ。しかし、それがねつ造の証拠となりました。ウッドはこっそり、プリズムを取り去っていたのです。プリズムがないのに、N線が出るはずがない。

ブロンロのねつ造に対し、不正を暴いたウッドが、科学雑誌「ネイチャー」に見解を発表。「期待通りのデータを求めていた科学者が、純粋な主観で現象を発見した」と、寄稿した。


極度の思い込みは、見えないはずのものを見せてしまう。この現象は、「病的科学」と呼ばれている。


病的科学の特徴

・大きな効果が出る時でも、その原因物質はきわめて微量しか検出されない。
・非常に高い精度で確認されたと主張される。
・今までにない驚くべき新理論が提唱される。
・批判に対しては、その場しのぎの仮説で反論する。
・発表当初は支持者が増えるものの、その後減りはじめ、最後は批判者が圧倒的な数になる。



しかし、なぜ、100人もの科学者が、N線を確認したと発表したのだろう? そこには、当時のヨーロッパ情勢が強く関与していました。

実は、発表した多くの科学者がフランス人。当時、フランスは科学の世界で、ドイツに大きく後れを取っていました。彼らは国の名誉と威信のために、論文をねつ造したと考えられている。




□ ねつ造が繰り返される背景


(1) 研究費を獲得するため、論文を次々に発表せねばならない。

(2) 研究者には任期がある人が多いので、研究を続けるためにも、成果が必要。

(3) 歴史に名を残したいという功名心。



国の研究費予算は、約3兆5000億円。

科学研究費補助金は、約2300億円。

より多くの補助金を得るためには、目新しい研究をして、論文などの結果を残し続けねばならない。




□ 製薬会社と大学との癒着


血圧を下げる効果があるという医薬品。そこには、莫大な利権がうごめいていました。その薬が日本で認可されたのは、2001年のこと。同時に、国内の5つの有名大学病院で、効果が検証されることになった。対象は、高血圧患者、計8400人以上だったという。

研究者たちは、その薬の効果効能を謳う論文を、次々と発表。これが医師向けの宣伝に使われ、薬の売り上げは、うなぎのぼりに。国内の売り上げは、年間1千億円を超えたという。

ところが、ヨーロッパの学会誌が、論文を検証。すると、報告されたデータの中に、重大な問題が存在することが分かった。カルテにない症状が論文に記載されていたり、脳卒中などの発症率のデータが操作されている。

あわてた国内のある大学は、自分たちが発表したデータを照合。すると、血圧値の一部に、人為的な操作が認められました。大学はすぐさま、論文の撤回を表明。これを受けて、他の大学でも、データ操作の有無が調査されます。

その過程で、ある人物が浮上した。大阪市立大学の非常勤講師だというA氏。しかし、彼がこの大学に在籍しているという事実はなく、肩書は偽りでした。しかも、すべての大学で、医薬品の臨床研究に関わっていました。

さらに、驚くべき事実が発覚します。A氏は、渦中の製薬会社の社員だったのです。

これを受けた製薬会社は、内部調査を開始。しかし、その時にはすでに、A氏は退職していたという。結局、製薬会社はねつ造の事実は認めず、謝罪した。

この一連の事件で、厚生労働省は、製薬会社を刑事告発。その容疑はあくまでも薬事法における「誇大広告」と「虚偽表示」でした。さらに先月、東京地検特捜部は、元社員を逮捕。全面解明に向け、捜査は継続中です。

その中で明らかになったのが、巨大な寄付金。その総額は、11億3千万円以上だといわれている。薬の売り上げは、1兆2千億円以上になっていました。




□ 偉人もどんだけ~!


<エジソンと電気椅子>


エジソン


発明王 トーマス・エジソン。交流を推進しようとしたテスラ陣営と、直流を推進しようとしたエジソン陣営で、対立が激化(電流戦争)。劣勢に立たされたエジソンは、驚異のネガティブキャンペーンを実施した。

交流は危ないものだというイメージを植え付けるため、電気椅子を開発し、新しい処刑方法を募集していたニューヨーク市に提供したのです。(また、それ以前にも、動物を交流電気で殺す実験を実施していた)

しかし、この目論見は失敗。評判を落としたのはむしろ、エジソンだったという。



<ニュートンとフック>


ニュートン


「万有引力の法則」の発見で知られる、アイザック・ニュートン。彼には、同様の研究をしていた、ロバート・フックというライバルがいました。

フックの死後、王立協会会長となったニュートンは、ライバルの業績を消そうと躍起になったといわれる。唯一だった肖像画を破棄したり、研究論文を隠した。



聖人視されている彼らも、こんな感じだった。

人間だもの…。





医者ムラの真実 (ディスカヴァー携書)






ねつ造は科学者だけがやっているわけではなく、意外と身近かも。

食品業者だってやってるし、マスコミも度々やっている。

見栄えをよくする、思わしくない結果を隠す、そう考えると、けっこう、そこかしこにあるかもしれない。




 → 「いい箱作ろう鎌倉幕府、歴史の別人説」

 → 「ビーバップ!ハイヒールの目次 2012年」






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